調達・購買部門のBCP対応

こんにちわ!マベ太郎です!

今回のブログでは、自分の仕事の事に関して書こうと思います。自分は今、電子部品の購買部門で仕事をしていて、主に開発購買の業務を行っています。そんな開発購買部門にいるのですが、現在、世界では圧倒的な“電子部品の逼迫”という状況に陥っています。

2018、2019年の電子部品の逼迫

2018年、2019年も同じような状況があって、その時は”セラミックコンデンサ”が購入できない。という状況でした。

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この記事の通り、その当時、車載用として需要が増え、スマホの高性能化により使用数が増えるなどの要因により、急激にセラミックコンデンサの需要が増え始め、供給がタイトになってきました。供給に不安を覚えたセットメーカー各社が、1社だけではなく他のメーカーにも同じような注文をいれる、それにより注文数は倍増してしまう。

それにより、セラミックコンデンサのメーカーは生産を増やさなければならないが、今までの倍も注文が来るとすぐには対応ができないため、注文してから納品されるまでの期間が今までよりも圧倒的に長くなる。そうすると、セットメーカー各社は「いつ納品されるかわからない。」という事で、さらに、今度は他のセラミックコンデンサメーカーへ注文を入れる。本当は不要なのに保険として注文を入れてしまうんですね。こういった繰り返しにより、本当に必要な数量の何倍にも注文が膨れ上がってしまい、“逼迫”という状況を引き起こしてしまい、最悪の場合、“注文を受け付けられない”というような事態になってしまうのでした。

結局、その時には、注文が少しずつ落ち着き、逼迫状態は解消されました。それでも今までのように、注文を入れたらすぐに部品が納品されるというような事は無くなり、どんな部品だとしてもしっかりと事前に各部品メーカーと情報共有を行いつつ、必要な期間を取った注文を出せるように社内部門と調整をするという事が本当に大事になりました。

 

2021年の電子部品の逼迫状況

さて、ここまでが2018年、2019年の頃の部品の逼迫に関する状況だったのですが、この頃はさらに“ひどい”状況になっています。

最初のきっかけは“コロナ影響でのテレワーク需要”。コロナウィルスの影響により、テレワークが仕事の主流となり、自宅で仕事をすることが多くなりました。それに伴って、在宅で使うためのPCの販売/生産数が増えました。当然、PCの需要が増えれば、PC周りで使用される電子部品の需要が増えました。下記の記事にもありますが、2020年の全世界のPC出荷台数は“2億7,500万台”を記録し、過去10年で最高の成長率となっています。2019年からは4.8%の成長という事なので、“1300万台程度出荷台数が増えた事になります。このように急激にPCの需要が増えた事により、PCで使用するCPUなどの半導体も同じように生産数を増やさなければならない状況となりました。

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さらに、昨年から皆さんが耳にするようになった“5G”という通信規格が世界的に普及し始めました。それに伴って、5G対応のスマートフォンが少しずつ普及し始めています。このスマートフォンも5G対応をすることによって、内部の部品の点数が増えます。下記の記事によると「5Gスマホでの搭載数は4Gと比べ3~5割増える」と記載されております。さらにスマートフォンやPCによって、データの通信量が増える事によって、“データセンターでの半導体の需要”も増えます。

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需要が増える中で、供給側はどうなのか?というと、コロナが一番厳しい状況だった2020年3月、4月頃は日本でも本格的にロックダウンが行われ、外出自粛という事で、多くの人が自宅から移動する事を辞めました。移動を辞めた事によって、買い物の機会も減り、半導体の需要の半数を占める「スマホ、家電、車載」の需要が大きく落ち込んだことによって、生産をかなり調整し、減産基調になっていました。一度、減産を行うとなると、そこから先ほどまでのスマホや5G、PC需要が急回復しても、その需要に急には対応できないのが半導体で、注文を入れてから3か月後くらいの期間が納品までに必要となりました。

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さらに、混乱を招いたのが、“アメリカによる中国半導体最大手SMICの輸出規制です。これによって、アメリカ向けに輸出する製品で中国SMIC製のICを使用している場合、規制がかけられる可能性があり、容易にSMIC製の半導体を使用できなくなってしまったのです。そうすると、急遽、各社が他の半導体メーカーへの転注を進めなければならなくなってしまうのだが、前述の通り、注文を入れてから納品までに必要となります。しかも、PCの需要増、スマホ/5G通信用に部品の需要も増えてきた中、半導体の生産は減産基調を取っていたために、簡単には対応ができません。

そこにさらに追い打ちで、“旭化成エレクトロニクスの工場火災による部品供給停止”、”テキサス州の大寒波による半導体工場の一時閉鎖”そして、“ルネサスエレクトロニクスの工場火災”と半導体の生産メーカーの相次ぐ供給問題によって圧倒的に供給量が少なくなってしまいました。

旭化成エレクトロニクスの工場の火災によって、“ホールICやカーディオ用IC、水晶デバイス用制御IC”などの簡単には代替できないような部品の生産が止まってしまいましたし、“テキサス州の大寒波”では、半導体の大手3社(サムスンエレクトロニクス、ドイツの半導体メーカー大手インフィニオンテクノロジー、オランダの半導体大手NXPセミコンダクター)の工場が止まり、自動車向けの半導体の供給が滞る事になりました。そして、ルネサスエレクトロニクスの工場火災も同じく、多くの製品の中で使用されている“マイコン”の生産に影響が出ており、半導体の生産に大きく影響を与えている。元々、足りていなかった半導体が多くの要因によって、需要過多の状態に陥ってしまい、今まで感じた事が無いような供給不足、逼迫といった状況に陥っております。

調達・購買部門に求められるBCP

さて、調達・購買部門としては、製品を生産するために部品を調達しなければならないのですが、このような状況では思うように部品を購入する事ができないため、自社の製品の生産に影響を与えてしまう事が大きくなってしまいます。どんなに安い部品を製品に組み込めても、どんなにコストダウンができても、どんだけ品質が良い部品を採用できても、“調達できなければ意味がありません”。そこで、この逼迫した電子部品の環境の中で、どうすれば部品調達・購買を安定的に行えるようになるか?を今こそ、しっかりと考えるべきだと思います。今すぐに行動に移したとしても結果が出るのは何年か先かも知れませんが先手を打つのは大事ですので、この機会にぜひとも考えていこうと思います。

品目別対応方法のシート

まず、上記のシートのように“生産影響”“調達難易度”の2種類の軸でまずは考える事にします。

“生産影響”という軸は単純にその品目の”購入額”、”購入数”が多い品目になります。購入金額/購入量が多い部品というのは、1点でも納入されないと生産が止まる、事業や売上への影響も大きくなります。逆に数量が購入数が少ないものであれば、生産/事業/販売への影響は小さいはずです。

そして、もう一つの軸は“調達難易度”です。これは、対象の品目が”汎用品”でサプライヤが多くいるような品目なのか?それとも、自社の要求仕様に合わせて作成したカスタム品なのか?そして、サプライヤが多いのか?少ないのか?という点になります。サプライヤが多ければ、有事の際に何かしら対応を進める事ができるかも知れませんし、逆にサプライヤが少なければ簡単には置換えなどができないので、その品目の重要度というのは上がってきます。

まずは調達している品目をこの4種類に分類してみます。この4種類の品目それぞれへの対応を検討していきましょう。

①の品目への対応

まず、①の品目に対する対応を考えます。①の品目は”生産影響が大きい”、すなわち購入数が多いもしくは購入金額が大きいものの、調達難易度が低い、汎用品でサプライヤが多い品目になります。

この品目で考えるべき対応としては”復社購買”を考えていきたいと思います。調達金額や数量が多いのであれば、その強みを生かして、多くのサプライヤに相見積りを取り、2社以上を採用する。そして、発注は1社に集中させず、2社に同じ比率もしくは優劣(60%、40%など)の形を取るのが良いと考えます。この対応を取れば、1社の供給が止まる事があったとしても最低でも、他方のサプライヤの供給が断たれなければ、生産影響は少なくて済みます。また、可能ならば他方に発注を集中させて、完全な生産体制を維持する事も可能ではあります。

ただ、この場合、注意をしなければならないのは、サプライヤ側の心理です。購入金額や数量が多いと思っていても、サプライヤ側からすると、金額を小さい、もしくは数量が少ないと場合には、この戦略を取り、有事が起きた場合には「重要な顧客ではないから、他社を優先しよう」という事になる可能性もあり得ます。なので、自社の購入金額/数量だけでなく、相手、すなわちサプライヤ側の受け止め方というのも事前に調査/確認しておく必要があります。

また、この対応を行うに当たってはやはり、設計/技術/品保、さらには工場との強力が必要になります。設計/技術/品保部門においては、2社分の技術検討や品質評価などを行わなければならないので、その時間をしっかり確保してもらわなければならないです。でなければ、”復社購買”という戦略も夢に終わります。さらに、工場とも当該の品目の調達戦略の共有が必要ですし、実際に2社から購入できるような仕組み作りを行って実践できるような環境を構築しなければならないです。

 

②の品目への対応

まず、②の品目に対する対応を考えます。①の品目は”生産影響が大きい”、すなわち購入数が多いもしくは購入金額が大きく、さらに調達難易度が高い、カスタム品もしくはサプライヤが少ない品目になります。この品目はとにかく問題が起きるとすぐに影響が出る品目になりますので、考えるべき対応としては”長期契約”や”サプライヤーとの関係構築”や”在庫の積み増し”を考えていきたいと思います。

この品目は、自社の生産への影響が大きい品目なので、サプライヤーとの関係を構築するのが最重要な品目になります。逆に過度なコストダウン要求などを行うと、サプライヤー側が離れていってしまい、最悪の場合、取引中止などの状況になってしまう可能性もあるので、そういった事は避けます。具体的には、サプライヤーと自社のトップ同士で定期的に打ち合わせの場を持って、トップ同士での密な連携を取る。これにより、有事の際などに、トップ同士での早い意思決定と協力を得られやすい環境が作られる。さらなる手としては、長期的な自社の需要を社内で算出してもらい、それをもとに“LTA(長期供給契約)を結ぶなどがあると思われます。

このような対応を取ったとしても、サプライヤーとうまく関係を作れなかった場合は“在庫の積み増し”を行う必要が出てきます。在庫を積み増す事によって、自社の財務は悪化してしまうので、経理部門との”どの程度の予算を捻出することが可能か?”を協議し、その予算の中で最大限の効果を出すしかありません。

また、その他にも、新規サプライヤの開拓も必要になります。カスタム品だからと言って、必ずしもそのサプライヤでなくても対応が可能な場合がありますし、サプライヤが少ないと思っていても、もしかすると、調査しきれていないだけの可能性もあるので、これを機に現在、取引がない会社だったとしても、積極的に新規サプライヤの探索を行いましょう。もしくは品目を見直ししてみると、カスタム品でなくても良い可能性もあるかも知れません。そうすれば、②の品目から①の品目に移す事ができ、それにより取れる対応が増える事もあります。

 

③の品目への対応

まず、③の品目に対する対応を考えます。①の品目は”生産影響が低い”、すなわち購入数が少ないもしくは購入金額が小さいもので、調達難易度が低い、汎用品でサプライヤが多い品目になります。

この品目では、“仕様の集約化”が大事になると思います。というのも仕様の集約化ができるようになれば、購入数量が増えるために①の品目へ置き換えられる可能性があるからです。もしくは、①の品目の中から流用できるようにすれば、③の品目を考える必要はなくなると思っております。汎用品だからと言って、”復社購買”という戦略を取ろうとしても、数量が少ないため、その少ない数量にサプライヤ側が嫌気をさして、取引の中止を申し出る可能性も出てきてしまうので、復社購買の戦略は足れないです。

また、もし、数量や金額も少ない事からも在庫を持つという対応方法も有効です。なぜなら、在庫を持つことによる経営への影響が少ないと考えられるからです。さらには、できる限りこの品目に対して、多くの時間を割き、調達・購買業務の負荷がこの品目に対して増えてしまう事自体がもったいないので、定期的なサプライヤとの情報交換を行い、需要状況と供給状況をとらえて、その結果に対して、問題がありそうであれば、早め早めに対応を取るという事も大事だと思います。

④の品目への対応

最後に④の品目に対する対応を考えます。④の品目は”生産影響が低い”、すなわち購入数が少ないもしくは購入金額が小さいものの、調達難易度が高い、カスタム品もしくはサプライヤが少ない品目になります。

この品目では、②と同じようにサプライヤーとの関係を構築するのが重要になります。ただし、生産への影響が少ない品目であるため、先ほどのようなトップ同士の関係構築というところまでは必要としません。ただ、“MTA(中期供給契約)”を結び、できる限り供給を保証してもらうようにしてもらう。さらに可能ならば、コストもできる限りの交渉を行う。また、③と同じようにカスタム品でなくても対応できるような設計変更や評価を行って、できる限り① or ③の品目への移行できるように社内調整をしていく必要がある。

もしくは、当該の品目を使用している製品自体を生産中止にしてしまい、供給状態が危うくなるような事態を避けるという方法もあります。この対応方法に当たっては、たとえば製品の生産は終わってしまって、サービス部品の供給のみが残っている。というような状況であれば、サービス部品のみを取りまとめてしまう事によって、供給問題を気にしなくて済む。という環境に持っていく事もできます。数量が少ないというその少なさを逆手に取った対応ですね。そういう意味では、そのサービス部品や製品を供給する相手側と営業の関係構築というのも重要になってきます。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?調達・購買部門として、BCPを考えるとした時に、どういった考え方をしていけばよいか?というのが少しは理解できたのではないでしょうか?今回は、実例なども入れて、説明をさせてもらったので、それぞれの業務や環境に合わせて、同じような考え方で進められるのではないでしょうか?

また、今回の例はあくまでも例なので、「こういう対応も有効なのではないか?」という別の例もあると思いますので、自分なりにもしくは同僚や上司とも考えてみると良いと思います!真面目な記事を書いてみましたが、良かったら今後も、こういう記事を書いてみようかと思いますので、よろしくお願いいたします。それではまた~♪

 

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