こんにちわ!マベ太郎です!
今回のブログでは、自分の仕事に関わる事なのですが、世界的な“半導体不足”に関して書こうと思いますが、若干見方を変えて、“半導体製造装置の販売”という製造側の側面から現在の半導体業界をみていこうかと思います。
世界的な半導体の需要
さて、昨今“半導体不足”によって、自動車の生産工場のラインが止まっている。とか、iPhoneの製造ラインにも影響が出る。とか、いろいろな事を耳にします。私の電気部品の購買を担当しており、昨今の頭を悩ませる問題の一つになっているのは確かで、メーカーによっては、「新規の受注を受ける事ができない」とか「受注を受けられるが、納品は23年以降でないとできない」とか、「現在の手配LTは48週かかります」とか言われる事態になっていて、凄まじい事態だなと思っています。
ただ、なぜ、こんなにも半導体が不足するような事態になってしまっているのか?というのが、疑問がありまして、確かにテレワークによって、PCの出荷台数は下記の記事にある通り、19年Q4と20年Q4を比較すると”26%”も伸びていて、年間でみても”13.1%”の増加という状況になっていて、確かに需要が高まっている事がわかります。
世界のPC出荷、この10年で最大の伸び–2020年に13.1%増
また、他にも自動車のエレクトロニクス化が昨今、急激に進んでいます。欧州では2035年までに“ガソリン・ディーゼル車の販売”を禁止する方針が出ていたり、さらにアメリカでも2030年までに新車販売の50%を電気自動車にするという発表を行っており、世界的にEVへのシフトというのが待ったなしの状況になっています。ガソリン車やディーゼル車が、電気自動車になると電気部品の数は10倍以上に増えると言われており、そうすると今までと比較して、車載用としての半導体の需要が増え、さらに半導体不足が加速する事になると思われます。
ただ、先ほどのPCの出荷数が13.1%増程度であれば、半導体の需要は同じく、13.1%程度の増加で良いわけで、そんなに不足する事にはならないと思います。なのですが、不足によりいろいろな製品において、半導体が無い事による生産ストップなどの影響を受けている事は間違いない状況です。
半導体製造装置の販売高の状況
さて、ここまで、需要側の状況をざっくりと確認してきましたが、さて今度は供給側の状況を確認します。供給側の状況というのは、何かというと、“半導体製造装置の受注状況”になります。
なぜ、半導体製造装置の受注状況が供給側の状況の確認に役立つのか?というと、本当に半導体の受注が増えており、生産が追い付いていない状況であれば、その受注に見合う生産数を確保できるようにするために、製造装置に対する投資を行うという判断が下されると考えたからです。逆に、目先の受注が萎んでいるような状況なのであれば、製造装置の投資を行う必要はなく、投資をする事によって、装置の稼働率が下がり、逆に工場としての利益率が下がってしまうので、製造装置の投資ではなく、営業側に対する投資を行う事になると思います。なので、製造装置の受注状況は大事な指標だと考えます。
では、さっそくその半導体製造装置の直近の状況と今までの状況を確認します。使用するのは、”日本半導体製造装置協会”の統計資料を参照させていただきます。
まずは、2005年以降の全世界の販売高を観ていきましょう。
この資料は、半導体製造装置協会のバックナンバーの資料になるのですが、2005年以降の全世界の半導体製造装置の販売高が記載されています。2005年以降は年々増えているのは簡単にわかりますが、その後、2009年のリーマンショックの影響で全世界的な不況があり、その影響で2008年度と2009年度は大きく落ち込んでいます。ですが、2010年度には今までと同じレベルまで回復しています。震災やタイの洪水があった、”2011年”以降も順調に増えていきます。
さらに過去3年くらいを観ると、2017年度が60.53 Billions US$、2018年度が61.33 Billions US$、2019年度が61.53 Billions US$、そして、去年、コロナウィルスの世界的な大流行を受けた2020年度であっても、さらに最高を更新して、79.19 Billions US$となっております。なんと、2019年からの伸び率でいうと、29%にも及びます。いろいろな業界で売上が下がって、厳しい経営状況になる企業が多かった中で、このような半導体製造装置の販売高は上がっていて、各半導体製造メーカーの装置に対する投資は継続していた状況にある事がわかります。という事は、それだけ半導体の需要が実際にあるという事が容易にわかります。やはり需要は本物なのでしょう。
そして、各国の状況を見ると半導体の投資状況がよくわかりますね。2020年度の販売高の合計が79.19 Billions US$でその内、中国が21.18 Billions US$で世界一の販売高。2019年度と比較して、1.5倍ほどまで増えている事、その次は韓国で20.02 Billions US$で2019年度と比較すると、2.0倍に近い伸び、そして、3位は台湾で18.84 Billions US$で2019年度と比較すると10%の伸びになります。この中国、韓国、台湾の3か国だけで、全体の75%にも上ります。この3か国に大きく半導体の供給を依存する形となっているんだなという事がわかります。
では、直近で状況の状況がどのようになっているのか?を確認してみましょう。
さて、2021年の第1四半期の結果をみると、大変好調であった2020年と比較しても、51%も伸びているというものでした。この状況が継続した場合、23.57 Billions US$ * 4四半期分 = 94.28 Billions US$まで年間の販売高が伸びる事になります。2020年度が79.19 Billions US$でしたから、19% 近い伸びになるという事になります。この伸び率が今後も続くのかどうか?というのが、半導体業界の需要状況を察知するのに、重要な指標になるのは間違いないと思います。
ただ、注意しなければならないのは、半導体業界というのは、今までもそうですが、逼迫と供給過多を繰り返しており、そのたびに半導体業界が再編再編を繰り返しているという状況だと思います。というのも、多くが“ダブル or トリプルオーダー”という発注側の作り出している問題なのですが、本当は1個あれば製品が作れるのに、その部品のメーカーが1社供給が厳しくなると、そのメーカーの部品の代替品になりえる部品を見つけて、手配したり、さらに、商社経由でも同じものを注文したり、その商社がさらに2社の別の商社に注文したり、最悪の場合、市場品にも手を付ける。こうなると、実際には1つあればいい部品が、いろいろなところに注文を出す事によって、数倍に膨れ上がってしまうのです。
半導体メーカーからすると、注文元に対して、何の製品向けの部品なのか?という事を聞いても、実際の注文元に辿りつくのは難しいですし、ダブルで注文が入っているかどうか?なんていうのはわかりえないのです。というか捉える事が難しい。
こういう事が起きると、今来ている注文は全て、ダブル or トリプルオーダーによるもので、実際の需要はもっと少ないものなのではないか?という考えになり、半導体製造装置などへの投資の判断ができなくなってしまいます。これも逼迫という状況に大きな影響を与えていると思います。
とは言っても、現状、半導体製造装置の販売高は目に見えて上がっているので、需要はまだまだ旺盛な状況なのだろうとおもいます。
最後に
いかがでしたでしょうか?現状の半導体製造装置の状況から、半導体不足を追ってみましたが、この状況が今後も続きそうな感じがわかりましたね。今後も、半導体製造装置の販売高をチェックしながら、半導体の受注バランスが崩れないか?崩れた際に、その供給過多な状況になったら、適正な価格で、適正な量を調達できるようにするために活用していきたいと思います。良かったら今後も、こういう記事を書いてみようかと思いますので、よろしくお願いいたします。それではまた~♪
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